海の上のキーボーディスト

2007/06/14

今宵は僕の人生でキーボーディストとして産声をあげる日
「Gon's Private ライブ in シンフォニー号」
シンフォニー号ライブ

朝、目覚めてから昼まで鍵盤の前に座っていた。
しばらく指を転がしていたが、何だか落ち着かない

 こんなフレーズでタラップを昇って良いのだろうか?

暫く葛藤し、気がつくと違う曲を弾いていた
何だかもどかしくなって、自転車で池袋へ買い物に出かける

気分転換なのか現実逃避なのかわからないが、

 平日の風は妙に新鮮だった

帰宅後、さっぱりしようと理容室に行こうと走り回る。
しかし理容室は火曜日はどこも定休日

仕方ないので歩いて20秒の美容室に足を運んだ
美容室は、母親に連れられて行った幼稚園以来だろうか?

美容師さんと今日のライブの話とか他愛もない話しをする。
短い時間ではあったが、すっきりとリラックスした。

 美容室って心まで奇麗になるんだな?

そんな似合わない事を感じがら自宅に戻り準備をする。

背中には鍵盤、右手にはずっしり機材、そして不安な気持ちも抱えて出発した。
美容室の前を少し照れながら通り過ぎたり。

山手線をぐるっと回って浜松町、そして潮の匂いを感じながら日の出埠頭へ向かう。

バンドメンバーが全員集合した。
シンフォニー号ライブ
いよいよなんだな?とまだ色々と考える余裕は残っていたかもしれない。

そして出航時間
色んな思いを胸にシンフォニー号に向かう
シンフォニー号ライブ

ドラムセットからPAまで全て持ち込みでバンドメンバー総動員でセッティング
しかし正直こんなに俊敏にセッティングが完了するとは・・・
シンフォニー号ライブ
 みんなの熱意の現れだ

ただホッとする暇もなく、セッティング完了と同時にお客様が来場

ふと我にかえると、自分が想像いていた以上の空間に呆然
頭の中が真っ白、いや真っ黒になった。

第一幕はジャズスタンダードを中心に演奏をする。
世界最低のキーボーディストによる演奏の始まりだ。
シンフォニー号ライブ

手が震える音が船のモーターとシンクロしているかのよう。
モニタリングがない環境で、自分の音が聴こえづらい。
鍵盤素人がこんな恐ろしい舞台で異音を奏でている

シンフォニー号ライブ
演奏中3人の自分がいた
・「フレーズを弾く度にあせる」
・「早く終って欲しい」
・「自分しか見えない」

演奏が終了するとお決まりの拍手を頂くが、
その度に今回の演奏はああだこうだと色んな事を深く考えてしまう。

第一部が終了し、バンドのメンバーと束の間の休憩時間
おいしい食事や、空間、みんなに励まされたりと安堵の表情もでてきた。
シンフォニー号ライブ

そして、第二部が始まる。
ここからは全てオリジナルで、スタジオで散々練習した曲ばかりだ。

しかしここからが悪夢の第2幕だった。

更に音量を下げた結果、音が殆ど聴こえない。
譜面もないので頼りの記憶も、船で揺られて転がり落ちてしまう。

ここからは「鍵盤の視覚」「頭の中の音」「過去の経験則」

半音上のコードを弾いたり、違うキーのスケールを弾いていたと思う。

それでも無情に音が流れていく。

第二部の演奏はキーボーディストとして明らかに失格の烙印

例えどんな状況であれ、どんな経歴であろうとプロと同じ土俵。
演奏家として悔しさをかみ殺しながら舞台を降りる。

演奏終了後は、気分を変えてバンドメンバーで船上に昇った
シンフォニー号ライブ

今朝の風とはまた違った気持ちいい風を全身で浴びる。

東京湾の夜景を見渡しながら、

 ああ、終ってしまったんだなあ?

あんなに失敗したのに、もう少し演奏したかったなんて。
たくさんのモノを背負って、タラップを降りた。

明日からまた現実の世界に戻る。
シンフォニー号ライブ

こんな素晴らしいメンバーとこんな場所でこんな自分と一緒に
演奏してくれた事が何よりも支えになったのかも知れない。

海の上には、まだ僕たちの音が流れているのかな?

PS:僕の音は海底の奥深く濁って沈みました
(おしまい)


そうそう「海の上のピアニスト」
彼は生涯一度もタラップを降りる事が出来なかった伝説のピアニスト
僕もそんなピアニストになりたい!が、あの爆死は怖い・・・

まあ、キーボーディストとして初ライブ(発表会除く)が船の上って、
ある意味僕も伝説のピアニストだろうが(苦)